情報処理学会主催の新資格「認定情報技術者(CITP)」について調べて思ったこと

認定情報技術者(CITP)

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ITProというサイトで情報処理学会という組織が主催する新資格「認定情報技術者(CITP)」が取り上げられていました。

他の資格制度とは異なる「IT技術者の社会的地位の確立を図る」という目的を持つらしく、とても興味を持ったので特徴を調べてみました。

簡単なまとめと認定制度について思ったことをご紹介します。

「認定情報技術者(CITP)」とは

情報処理学会という一般社団法人が主催する情報技術者を対象とする上級資格です。申請案内では資格制度の目的が以下のように定義されています。

高度の専門知識と豊富な業務実績を有する情報技術者を、認定情報技術者(Certified IT Professional、以下、CITPといいます)として可視化してその社会的地位の確立を図ること、および、CITPからなるプロフェッショナルコミュニティを構築し、コミュニティ活動を通じて社会および産業界のニーズに応えることを目的としています。

認定レベルはITスキル標準と連動しており、まずはレベル4の認定のみ開始するようです。IPA(情報処理推進機構)が主催する国家資格である情報処理技術者試験とは異なり、民間資格の位置付けです。また有効期限は3年間で、料金は申請に20,000円(税別)、認定時の登録料に10,000円(税別)が必要です。

第一回の申請受付は2014年11月4日(火)から開始されます。

公式サイト:認定情報技術者制度

関連記事:News & Trend – 「IT技術者を社会から尊敬される職業に」、情報処理学会が新資格制度を始めた理由:ITpro

情報処理学会について

初めて耳にしましたが設立が1960年と古くからある組織のようです。公式ページの学会紹介では、目的に以下のように書かれていました。

コンピュータとコミュニケーションを中心とした情報処理に関する学術、技術の進歩発展と普及啓蒙を図り、会員相互間および関連学協会との連絡研修の場となり、もって学術、文化ならびに産業の発展に寄与する。(※「定款」より)

また賛助会員として学会をサポートしている企業にはGoogleやMicrosoft、NTTデータや楽天など数多くのIT関連の有名企業が名を連ねています。

ITスキル標準について

経済産業省が定める、個人のIT関連能力を職種や専門分野ごとに表したものです。IPAのサイトでは以下のように書かれています。

各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標であり、産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするものです。

ITスキル標準V3 2011では共通キャリア・スキルフレームワークの7段階のレベルが以下のように表されています。最大のレベル7では「世界で通用するプレーヤー」と定義されています。

ITSSレベル 7段階

「認定情報技術者(CITP)」資格制度の特徴

公式サイトの申請案内や申請様式から調べてみた資格制度の特徴です

前提として情報処理技術者試験の高度試験合格が必要

前提としてIPA(情報処理推進機構)が主催する情報処理技術者試験の高度試験(レベル4)に合格していないと申請ができません。

これはITスキル標準(ITSS)のレベル4以上に相当する知識とスキルを保有していることを証明するためのようです。2014年8月現在、高度試験には以下のものがあります。

  • ITストラテジスト試験
  • システムアーキテクト試験
  • プロジェクトマネージャ試験
  • ネットワークスペシャリスト試験
  • データベーススペシャリスト試験
  • エンベデッドシステムスペシャリスト試験
  • 情報セキュリティスペシャリスト試験
  • ITサービスマネージャ試験
  • システム監査技術者試験

しかしシステム監査は本制度の対象職種ではないため、レベル4の中でも「システム監査技術者試験」は対象の前提資格の中にありませんでした。

また現行の試験制度だけでなく、テクニカルエンジニアやシステムアナリスト等の旧試験の合格でも良いようです。

スキルを保有しておりそれを業務で発揮していることが問われる制度のため、前提条件があるのは納得できます。

筆記試験がない

以下は公式の申請案内(PDF)に記載の「申請から認定までの流れ」の抜粋です。認定までの審査は申請書と推薦書の書類審査と、一部の申請者が対象となる面接審査となっており、筆記試験のようなものはありません。

認定情報技術者(CITP)個人認証申請フロー

申請書と推薦書様式は公式サイトでMicrosoft Wordドキュメントで配布されています。

また申請書は職種と専門分野ごとに全19区分にわかれています。試しにITスペシャリスト-セキュリティの申請書様式を見てみたところ、以下のものを記入する形となっていました。

  • 主要業務・研修・資格・プロフェッショナル貢献の記録
  • 業務経歴書(プロジェクトの具体的な内容)
  • 達成度指標チェックシート
  • スキル熟達度チェックシート

認定情報技術者(CITP)個人認証申請書様式

業務経歴書では1つの業務に対して要求された年数(レベル4では2年以上)を満たす経歴を記入する必要があります。

さらにカスタマサービスと IT サービスマネジメントの職種では「成功裡に」遂行した実績が求められます。

ただしライン業務やサポート業務などであってもITスキル標準の内容に合致していれば業務として認められるようです。

企業の社内資格制度と連動する可能性がある

申請案内では以下の通り、社内資格制度を持つ企業と連動してのCITP資格認定の可能性が示唆されています。

(注)情報処理学会では、情報処理学会が個々の個人の認証を直接行う本方式のほかに、企業の社内資格制度がCITP資格制度と整合性があることを情報処理学会が認定し、社内資格を得た個人にCITP資格を与える方式も検討しています。

大手SIerの日本ユニシスなどでは社内技術認定制度があるため、それらが対象になるものと思われます。

しかし社内資格者という外部からわかりづらいものに対してCITP資格を与えて、個人認定者との公平性があると言えるのでしょうか。

おわりに

私は前提条件を満たしているので興味を持って調べましたが、おそらく受験はしません。

業務経歴やコミュニティ活動の貢献度が重視され、高度なスキルを「実際に発揮しているか」が重視される全く新しい資格制度のようですが、CITPのコミュニティ外でIT技術者としての社会的地位が確立されるのかは疑問です。

勉強をすることで知識を得られる資格でもないため、エンジニアとしての地位を上げていくのであれば自分の市場価値を上げていくことを考えるのが先決です。

賛助会員として多くの企業がサポートしている学会が主催であるため、IT技術者の端くれとしては今後に期待したいです。